口から食べるプロジェクト
口から食べるプロジェクト
食べる幸せを感じられるように、
チームのちからで応援します。
クチタベとは
口から食べるプロジェクト(クチタベ)は、「食べること」を人間にとって根源的な生活行為と捉え、多職種が専門性を結集して連携することで、生活全体の質の向上(QOL)を支援する、桜十字病院全体の取り組みです。
患者さまご本人の価値観や思いを尊重し、医師、看護師、管理栄養士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、薬剤師、介護士/ケアワーカーなどの多職種が連携し、包括的なアプローチを行います。多職種チームは、専門的な立場から患者さまに向き合い、その方の希望や状態に合った最善の「食」「食べる楽しみ」を実現するべく、日々多角的に検討し支援します。
クチタベの取り組み
食べる意欲へのアプローチ
歯ぐきでつぶせる「ソフト食」
少量で栄養が摂れる「パワーハーフ食」
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ご飯や汁物にMCTオイル・プロテインなどを混ぜ、通常の食事の半分量で1食分の栄養が摂れる食事
イベント食
季節感・サプライズのあるメニューを取り入れ、食べる楽しみや意欲を感じていただけるよう工夫しています。
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四季彩膳
四季を彩る食材を使い、普段とは少し趣を変えたお食事。 -
故郷の味シリーズ
月に一回全国の郷土料理を病院食として提供してます。 -
バースデーバイキング
お誕生日月の方にデザートバイキングを提供しています。
医科歯科連携
入院中の患者さまには看護師やリハビリスタッフが口腔ケアを行い、必要性を認めた場合には外部の訪問歯科の介入を積極的にご提案しています。特に肺炎予防や口腔機能の維持には、歯科専門職の関与が欠かせません。専門的な視点が加わることで、より適切な口腔管理が可能となります。

スタッフのスキルアップ
新人看護師には教育プログラムの一環として食事介助技術の研修を実施するなど、スタッフの技術向上に向けて継続的に取り組んでいます。また毎年の桜十字NST研究会や不定期の外部講師によるセミナーなど、摂食嚥下や栄養管理に関する学びの場を積極的に設けています。

口から食べるプロジェクトにおける専門職の紹介
口から食べるプロジェクトは、多職種が1つのチームとなり、包括的な評価・治療を行います。
口から食べるプロジェクトにおける専門職の役割をご紹介します。
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医師(Dr)
- 栄養状態の現症・病因を評価、分析し嚥下機能などどのようにしたら食べられるか検討を行っています。形の違う食事を一膳で評価・訓練することができる「ステップアップ食」などを活用し、患者さまの負担を考慮しながら入院早期から経口摂取へ取り組んでいます。食べ物を認知し咀嚼することに始まり、口腔・咽頭食道への一連の嚥下へと進む食べるを科学します。食べるを医学します。そして、食べるを個々の能力に応じてテーラーメイドします。
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看護職(Ns)
- 食事の時間が安心で楽しくなるようお手伝いします。安全に配慮しながら、その方のペースや体調に合わせた支援を行い、自立を大切にします。食事の様子だけでなく、日頃から患者さんをよく観察し、小さな変化にも気づけるよう心がけています。多職種と連携し、チームで支えています。
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管理栄養士(DT)
- 栄養状態の現症・病因を評価、分析し嚥下機能などどのようにしたら食べられるか検討を行っています。
形の違う食事を一膳で評価訓練することができる「ステップアップ食」などを活用し、患者さまの負担を考慮しながら入院早期から経口摂取へ取り組んでいます。 -
言語聴覚士(ST)
- 患者さまの口腔機能や嚥下機能を最大限に引き出すために、評価や訓練を繰り返し「なぜ食べられないのか」「どうしたら食べられるのか」を検討し、早期の経口摂取再開を目指します。安全に食べられるための嚥下訓練も行っていきます。
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歯科衛生士(DH)
- ご入院された際に「虫歯はないか」「入れ歯は合っているか」を確認し、必要に応じて歯科治療へつなげます。また患者さまに適した清掃器具と清掃方法の検討・口腔ケアなどを行っていき、口腔環境を整え、口から食べる準備を支援いたします。
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理学療法士(PT)
作業療法士(OT) - 口から食べる動作には、誤嚥を防ぐ呼吸機能、姿勢を維持する体幹機能、食べ物を口に運ぶ上肢機能など、下支えする全身の機能が必要です。理学療法士・作業療法士は、全身の機能を高めることで、口から食べることを支援いたします。
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薬剤師(Ph)
- 薬の副作用が原因で食べられなくなったり、食欲が落ちたりすることがあります。使用中の薬が本当に必要なのかの判断が重要となります。逆に薬によって食欲の改善が期待できることもあり、患者さまに合った薬について主治医・病棟スタッフと検討を行っています。
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介護職(CW)
- 食事の時間が安心して楽しく過ごせるよう、やさしく寄り添いながらお手伝いします。安全な姿勢やその方のペースを大切にし、自立を支援します。また、日々の様子を観察し、小さな変化にも気づけるよう心がけています。看護師やリハビリスタッフ、栄養士など多職種と連携し、チームの一員として支えています。
NST(Nutrition Support Team: 栄養サポートチーム)
入院中の低栄養の患者さまに多職種でアプローチする医療チームです。
当院のNSTにはリハビリスタッフが複数名所属しているのが特徴で、摂食・嚥下機能や全身状態に着目し、QOL(生活の質)の維持・向上を最終的な目標としています。

クチタベ事例
症例 01
67歳 女性
- 小脳出血にて嚥下障害
- 他院の回復期病棟で嚥下評価・訓練実施を行ったが、経口摂取は難しいと判断され、胃瘻造設して自宅退院
結果
当院での評価・訓練を経て、普通食の3食経口摂取が可能となり自宅退院された。退院後も安定して食事摂取が可能だったため、1年後に胃瘻を抜去された。
症例 02
55歳 男性
- 構音障害、右半身脱力感の増悪により急性期病院に入院、脳幹梗塞の診断
- 発症から数週間で当院の回復期リハビリテーション病棟に転院
- 転院時は経鼻経管栄養
結果
入院後にVE/VFを実施し、嚥下障害の改善が見込まれたことから、全身リハビリの一環として嚥下リハビリを実施。入院期間中に経管栄養から経口摂取に移行することができ、自宅退院となった。
症例 03
20歳 女性
- 幼少期からの神経難病
- 在宅生活にて胃瘻による栄養補給
- 本人と家族の希望により、外出時に食べられる物を探す目的で当院入院
結果
入院後の簡易VEでは嚥下可能との判断で、嚥下訓練を開始。むせは無いが、疲労感が強かったため摂取量を増やすことは難しかった。
安全に食べられる食事の種類を増やすことを念頭に評価を行い、最終的にゼリーやえびせんなどの摂取が可能と判断。入院後2か月で自宅に退院となった。
症例 04
93歳 男性
- 自宅で生活していたが、3年前から施設に入所
- 徐々に身体機能が低下し、経口摂取量が減少
- 誤嚥性肺炎を繰り返す中で、急性期病院から当院に転院
- 入院時は経口摂取は可能だったが、必要な栄養量を経口のみで摂取することは困難と判断されていた
結果
「90代という年齢も考慮すると経口摂取による本人の負担が大きく、栄養摂取目的での経口摂取再開は選択されなかった。経管栄養をベースに、ST介入時のみお楽しみ目的に経口摂取を継続し、そのまま終末期を迎えた。
嚥下評価入院
安全にたべるための方法を検討するための入院です
以下の対象患者さまの症状や食事の状態を把握して、患者さまの抱える問題を多職種で包括的に考え、最善の方法を検討します。
退院後の食事内容など、日常生活にご活用ください。
- 対象者
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- 少しでも口から食べたい
- 最近むせやすくなってきた
- 専門的な評価を受けたい
- 食事形態を上げたい
- 入院適応の条件を満たす方
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- ご本人が「口から食べたい」という意志がある
- 現在、自宅や施設で生活している場合は、当院の地域連携室までご相談ください
- 口腔衛生が良好で、病気が安定している
- 評価入院に対して主な介護者から理解と協力が得られる
- かかりつけ医からの診療情報提供書を作成いただける
- 入院期間
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- 数日~1週間程度
- 入院の内容
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- 多職種による嚥下評価
- 栄養状態の評価と、必要時は栄養指導
- 食事介助方法や食事の際の姿勢についての評価、検討
- 食事形態の検討
- 退院後の自主訓練に関する指導
- 薬剤の見直し提案
お問い合わせは患者さま相談窓口まで
桜十字病院 地域連携センター 地域連携室
096-378-1120
平日9:00~17:00 ※日祝除く